Aquafil Japan(アクアフィル ジャパン)は、日本の伝統に基づく美意識と現代的なデザインが融合するデザインの現場において ECONYL® ナイロンの可能性を最大限に引き出す方法を探るため、2020年より日本での総合的な市場調査を行っています。
このリサーチにより、デザイナーにとって重要なインスピレーションの源となる3つの美的要素が明らかになりました。その要素とは、わびさびの概念から生まれる静寂の中の奥深さ、ラテン文化圏の影響を受けたエネルギッシュな表現力、そして現代のAI技術によって形成された進化する視覚表現です。
これらの要素が互いに影響しあい今日のインテリア業界に大きな変化をもたらしているといえます。文化的なアイデンティティ、素材利用における社会的な責任、新技術の探求が基盤となり、未来への枠組みを形作っているのです。
この対談ではアクアフィル グループの BCF 製品部門デザイン&マーケティング担当マネージャーのガエル・メルリンが 、国際的な展示会や建築ビエンナーレから得たインサイト、グローバルトレンド調査に関する考えをもとに、2027年に向けて日本のデザイン界がどのように変わっていくかというポイントについて、彼女の意見をご紹介します
「わびさび」本物のもつ真の魅力、無常の中にあるはかなさ、そして時を経て明らかになる普遍的な美
不完全な中にも本物だけがもつ魅力があり、時を経てなお美しさに深みが増すという「わびさび」の概念は、不完全なもの、質素で慎ましいものの中に豊かさや魅力を見出す日本独特の美意識を反映しています。これは素朴で慎ましくあること(わび)、時を経ることで深みを増す魅力(さび)を受け入れ 、静寂と無常のはかなさに美を見出す哲学であり、豪華なものや完璧さを否定するという意味はありません。完璧な見かけを追求するのではなく、素材に自然な経年変化が加わることで落ち着きが増し、ユーザーの感情に響くインテリアを目指すべきだという考え方です。
「わびさび」の概念は、耐久性、素材利用における社会的な責任、穏やかな安らぎを求める現代のインテリア業界においても、人々の感情に深い影響を与え続けています。ギャエル・メルリン氏は「わびさびの考え方は、地元地域の原材料、時代を超えて愛され続ける色、木材や大理石のような長持ちする素材といった、持続可能性の取り組みと本質的に結びついている。」と考えます。
このようなアイデアは、再生素材や、修復されたものの目に見えるような修復の跡にも美しさを感じてもらえるような、意識の改革を促すことでしょう。「修復により生じる不完全さは今やデザインの一部として受け入れられ、ときに称賛されることさえあります。」そしてまた、手ざわりや自然光、緑豊かな環境に対するこだわりは、わびさびの概念の重要な要素である自然との深い結びつきに由来するものだと考えます。同じような感性を示す展示は、最近イタリアで開催されたビエンナーレ国際建築展でも、ミネラルパレット、有機素材、自然の要素を取り入れた空間デザインなどが複数の展示場においても見られました。
豊かな色彩と職人のアイデンティティが示すラテン文化圏の影響
ラテン文化圏の影響がみられる最近のトレンドには、「わびさび」の静寂さとは対照的な、躍動的な勢いを感じさせるものが見られます。表現力豊かな色と手作りならではの質感が特徴であり、文化的アイデンティティを強調したラテン系のデザインは、画期的かつ没入感あり、感情を高揚させるようなスペースに最適でしょう。
独特の風合い、細部へのこだわり、ハンドメイドの美しさといった特徴は、伝統と職人のノウハウが可能にした手法によるものです。このデザイン要素においてもまた、再生素材が重要な意味を持ちます。
この点についてガエル・メルリン氏は「伝統的なハンドメイドのラグの素材には、ウール、シルク、サイザル麻などの天然繊維を使うのが一般的です。 ECONYL® Bespoke のような取り組みにおいては、これらの天然素材を代替するものではなく、耐久性が要求される場所で高い性能を発揮する、ソリューションとなり得る素材の開発を目的としています」と述べています。
その開発において「色」が重要な要素となっており、クラーケンウェル・デザイン・ウィークに参加したメルリン氏は、素材が感情に訴えるインパクトについて関心が高まっていると感じたそうです。「空間の色がその場の雰囲気を形成し、なんらかの作用をもたらしていることについて、多くの議論を目の当たりにしました。ニュートラルな色調と組み合わせるだけでも、気分が上がるフィールグッドなスペースを創出することができるのです。」とメルリン氏は指摘します。
この手法は、エネルギーに満ちあふれるポジティブで現代的なビジュアルで、コンテンポラリーデザインにストーリー性をもたらすことができます。
デジタルとフィジカルの融合が生み出すAI技術の視覚言語
デザイナーのコンセプト作成やアイデア開発の方法への人工知能の影響は、ますます高まる傾向があります。3Dプリントによるレイヤー状のフォルム、デジタルとオーガニック要素のハイブリッド、ゲームや映画作品、メタバースのビジュアルなどはその影響によるものだといえます。
AI技術が新たな美的要素への気づきや今までになかった素材の組み合わせといったアイデアを提供するようになり、デザインの初期段階(アイデア出し~プロトタイプ作成)の従来の手法が変わりつつあります。
「AIは創造的な作業をサポートする強力なツールです。製品のライフサイクルをシミュレートすることで、思いがけないアイデアが生まれ、より意識的に素材を選択することも可能になります。」
しかしここでメルリン氏は、バランスの必要性も強調しています。「私はAIが環境に与える影響も常に考えています。また本来、創造性は人間の直感から始まるもの。ですから今でも私は、まず紙にスケッチすることから始めるのです。」
現代のAIの役割とはイノベーションを促進する媒体であり、人間の創造性、マテリアルに関する知識や見識、現実世界における感性に根ざした活動をサポートするものであるべきです。
写真のクレジット: Daniele Ansidei
日本のデザインの未来:2027年のトレンド予想が示すもの
「わびさび」、「南方文化圏の影響」、「AI技術」という3要素のトレンドは、日本のデザインが変革の時を迎えることを示しています。 このような方向性が主流になることで 、自然界における不完全さ、手作りの風合い、そしてデジタル技術が可能にするシミュレーションといった一見異なるもの同士が調和し、新たなインテリアの未来を形成する驚くべき手法が生まれます。感情に訴えかける素材、そして空間とのつながりを感じさせる色づかいが重視される一方で、現代のテクノロジーが、創造力がもたらす可能性をさらに広げてくれることでしょう。そしてテクノロジーとエモーションのこの相互作用が、2027年のデザイン業界の方向性を決定づけるものとなるでしょう。伝統のデザインが進化し、イノベーションの方向性が定まり、「人間が実際に体験すること」がさまざまな選択の中心であり続ける、そんな画期的な未来が予想されます。